ビットコインやイーサリアムの誕生から十数年、仮想通貨は単なる投資対象を超えて、決済や送金、さらには税金の支払いにまで利用されるようになっています。とはいえ、その発展度合いは国ごとに大きく異なります。
本記事では、「仮想通貨が発展している国」というテーマで、世界各地の事例を紹介し、日本人投資家や旅行者に役立つ最新の状況をまとめました。
エルサルバドル:ビットコインが法定通貨に
2021年、世界で初めてビットコインを法定通貨として採用したエルサルバドルは、仮想通貨史に残る大きな一歩を踏み出しました。店舗や観光地での支払いに利用可能で、旅行者もビットコイン決済を体験できます。
ただし、普及度には地域差があり、IMFとの合意により強制利用から「任意利用」へ変更された点は注目すべきポイントです。
中央アフリカ共和国:アフリカ初の法定通貨採用国
中央アフリカ共和国もビットコインを法定通貨として導入しました。人口規模や経済規模は小さいものの、アフリカにおける仮想通貨の可能性を示す象徴的な動きです。採用後の制度変更など課題は残りますが、暗号資産を通じた金融包摂の可能性が評価されています。
ジョージア:税優遇と実用利用が進む新興国
コーカサス地方のジョージアは、仮想通貨利用が生活に根付いている先進事例のひとつです。
個人の仮想通貨取引益は所得税やキャピタルゲイン税が非課税とされ、税制面の優遇が大きな魅力となっています。さらに、首都トビリシでは小規模店舗での仮想通貨決済が浸透し始め、2025年からはビットコインやUSDTでの税金支払いも可能になりました。電力コストの安さからマイニングも盛んで、世界有数のハッシュレートを誇ります。
加えて注目されるのが、トビリシ国際空港に設置された仮想通貨交換所「AllTrust」です。
出発ロビーで24時間営業しており、わずか15分で暗号資産と現金を相互に交換可能。NBG(ジョージア国立銀行)のライセンスを持つ合法サービスで、アプリから事前申請を行えば手数料が15%割引になります。旅行者は到着時に仮想通貨を現金化したり、帰国前に余った現金をUSDTウォレットに戻したりできるため、空港を利用する日本人にも便利なサービスです。
このように、日常利用からインフラ整備まで幅広く発展しているジョージアは、仮想通貨を「投資対象」ではなく「生活ツール」として活用している点で際立った存在といえるでしょう。
マルタ:ブロックチェーンアイランドの先駆者
地中海の島国マルタは、「ブロックチェーンアイランド」として知られ、いち早く仮想通貨関連の法律を整備しました。世界的取引所やブロックチェーン企業を誘致し、EU圏内での安定性を確保している点も強みです。観光立国でありながらデジタル経済への転換を進めており、今後も欧州の仮想通貨ハブとして存在感を発揮していくでしょう。
アラブ首長国連邦(UAE):ドバイを中心に急速発展
UAEは特にドバイを中心に、仮想通貨の実用化が急速に進んでいます。不動産購入や航空券予約に仮想通貨が利用できる事例が増え、規制面でも国際的な枠組みが整いつつあります。中東の金融ハブとして、欧米・アジア双方から投資と人材を集める動きが活発です。特に注目を集めているのが、エミレーツ航空による仮想通貨決済導入の発表です。
エミレーツはCrypto.comと提携し、来年から「Crypto.com Pay」を決済システムに統合する計画を明らかにしました。これはドバイが推進する「グローバル仮想通貨ハブ」戦略の象徴的な動きであり、エミレーツ幹部は「デジタル志向の若年層顧客への対応」を狙いと語っています。
こうした航空業界での採用は、不動産や通信と並んで仮想通貨の普及を後押しする流れの一部といえます。ドバイは明確な規制とエコシステム整備を背景に、複数の産業で実用化を進めており、大手企業の採用が市場心理にプラスの影響を与えることも期待されています。
シンガポール・エストニア・ポルトガル:投資家に人気の拠点
シンガポールは国際金融都市として多くの取引所やフィンテック企業が拠点を構え、エストニアは行政へのブロックチェーン活用で知られています。ポルトガルは個人投資家への税制優遇があり、ヨーロッパ移住先として人気を集めています。いずれも投資家や起業家にとって魅力的な環境です。
日本と欧米の状況
日本や米国、欧州主要国では、仮想通貨は法定通貨ではなく「資産」として扱われています。日本では支払い用途はまだ限定的ですが、規制や税制が整備され安全性が高い投資環境が整っています。欧州ではスイスが特に進んでおり、仮想通貨銀行や資産運用の仕組みが広がっています。
まとめ
仮想通貨が発展している国は、それぞれに異なる特徴を持っています。エルサルバドルや中央アフリカ共和国は法定通貨としての導入を進め、ジョージアは日常生活や税金の支払いまで仮想通貨が浸透しています。マルタやUAEは国家戦略としてブロックチェーン産業を育て、シンガポールやエストニア、ポルトガルは投資家に有利な環境を提供しています。各国の取り組みを比較すると、仮想通貨の未来は単なる投資商品にとどまらず、社会や経済のインフラに組み込まれていく流れが見えてきます。日本から投資や移住を考える場合も、これらの事例は参考になるでしょう。


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