近年、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は「投資」や「資産運用」のイメージが強いものの、実際には日常的な活用方法も広がりつつあります。その一例が給与支給。世界では一部の企業やスタートアップが、従業員の給与を仮想通貨で支払う取り組みを始めています。この記事では、仮想通貨給与の背景やメリット、そして実際に導入している企業の事例を紹介します。
なぜ仮想通貨で給与を支払うのか?
企業が仮想通貨で給与支給を検討する背景には、いくつかの要因があります。
まず第一に、グローバルで働くリモートワーカーの増加です。国際送金には通常、高額な手数料や数日の着金待ちが発生しますが、仮想通貨を利用すれば即時かつ低コストで支払いが可能になります。
次に、仮想通貨を給与として受け取りたいと考える若い世代の増加も要因です。特にデジタルネイティブ層は、資産をドルや円だけでなく仮想通貨でも持ちたいと考える傾向が強まり、企業側がそのニーズに対応するケースが増えています。
さらに、採用競争力の向上も大きな動機です。「仮想通貨で給与を受け取れる」というユニークな福利厚生は、IT人材やブロックチェーン業界の専門家にとって魅力的な条件となります。
仮想通貨で給与支給を行う企業の事例
海外企業の事例
アメリカやヨーロッパでは、既に複数の企業が仮想通貨給与を導入しています。
- Coinbase(米国)
大手暗号資産取引所のCoinbaseは、従業員に対し給与の一部をビットコインなどで受け取るオプションを提供しています。取引所自らが実施している点で象徴的です。 - Bitwage(米国)
給与支払い代行サービスを提供するBitwageは、企業が従業員に仮想通貨で給与を支給できる仕組みを整備。フリーランサーやリモートワーカーに特に人気があります。 - SC5(フィンランド)
IT企業のSC5は、2013年という比較的早い時期から従業員にビットコインでの給与支給を選択肢として提供し、業界の先駆けとなりました。
日本企業の動き
日本では法規制の関係から、給与を「全額」仮想通貨で支給することは難しい状況です。ただし、福利厚生の一部として導入する企業は出てきています。
- GMOインターネットグループ
2018年より、希望する従業員に対して給与の一部をビットコインで支給できる制度を導入しました。仮想通貨関連事業を展開する企業らしい取り組みであり、国内での注目度も高まりました。
仮想通貨給与のメリットとリスク
仮想通貨で給与を受け取るメリットは、資産形成の多様化と送金の利便性にあります。特に海外在住の従業員にとっては、為替手数料や送金時間の削減は大きな利点です。
一方で、価格変動リスクは避けられません。ビットコインやイーサリアムは価格が日々大きく変動するため、給与を受け取った直後に価値が大きく下がる可能性があります。また、日本のように労働基準法で「通貨払いの原則」が定められている国では、導入に法的な制約も伴います。
今後の展望
仮想通貨での給与支給はまだ一般的ではありませんが、リモートワークの拡大やWeb3業界の成長とともに、今後徐々に広がっていく可能性があります。特にグローバル人材を抱えるIT企業やスタートアップでは、従業員のニーズに応える形で導入が進むでしょう。
日本では法的制限があるものの、GMOインターネットのように「給与の一部を仮想通貨で支給する」事例は増えていくと予想されます。企業にとっては、デジタル時代に合わせた新しい福利厚生としての価値も高まっていきそうです。
まとめ
仮想通貨での給与支給は、まだ先進的な取り組みではあるものの、実際に導入する企業が着実に増えています。海外ではCoinbaseやBitwageのような先駆者がおり、日本でもGMOインターネットが試験的に制度化しました。最大の魅力は国際送金の利便性とデジタル世代へのアピールにありますが、一方で価格変動リスクや法的制約という課題も残ります。とはいえ、世界的なトレンドとして「給与=法定通貨のみ」という常識が変わりつつあるのは確かです。仮想通貨で働き、仮想通貨で受け取る時代は、思ったよりも早く訪れるかもしれません。


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